こども家庭庁が発足して一年が経ちました。この間に複数の省庁にまたがる少子化対策の「加速度プラン」が取りまとめられ、昨年12月に閣議決定されました。
一方で、総務省が4月12日に発表した、2023年10月1日時点の日本の総人口推計は、1億2,435万2千人となり13年連続で減少しています。出生児数が死亡者数を下回る「自然減」は17年連続で、減少幅は過去最大の83万7千人となりました。
出生率低下について世界を俯瞰してみれば、先進国では以前より少子化が進行しています。多様な要因が考えられますが有効な決め手になる対策は解明できていません。しかし、歴史に学び、進化生物学の知見を借りれば、これは、人類が進歩して豊かになり、長寿化し、結婚・出産、移動などの選択の自由が増した結果のようです。この流れを見据えて人口全体を定常状態に保つためには、「縮減する社会」をマイナスにのみ捉えずに、今出来ること、特に、生まれてきた子どもを「誰一人取り残さない」ことに尽力していくしかないと思われます。
この視点から考えましても、子どもと接する職場で働く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」の創設は、子ども政策の司令塔としてのこども家庭庁の成果の大きな一つだと考えます。対象が学校や保育所、塾など幅広いため、必要性が指摘されながら議論が進まない分野でした。
性暴力は、子どもに重い心身の傷を負わせるとともに、子ども自身のセルフエスティーム(自己肯定感、自尊心) を大きく損なわせます。子どもが生き生きと未来に希望をもつて生きていくためには、セルフエスティームを高めていくことが大切です。このセルフエスティームが高ければ、困難に出会っても、何かにつまずいてもその経験を活かすことが出来るようになります。セルフエスティームは自分ひとりで高めることはできず、幼少期、特に保護者との関係や地域社会の中で存在自体が認められている経験が大変重要になります。
こうしたことの積み重ねが、子どもを誰一人取り残さないことに通じます。
私たちはその一助となる思いで、すべての子どもが健やかに成長できる社会の実現に寄与することを目的として事業を推進して参ります。
健全育成事業は、児童館・放課後児童クラブ、青少年交流センター等7施設6事業を地方自治体から託されて運営しております。
企業主導型保育事業は、子ども・子育て拠出金を負担している企業等が従業員のために保育施設を設置・運営している場合に、運営費を助成しております。令和5年度は約4,500施設に助成実施しました。
児童給食事業は、低カロリーでビタミン・カルシウム等子どもの成長にとって栄養価が高いスキムミルクを、全国で要望のある保育所をはじめ児童福祉施設等に安価で配分しています。
児童養護施設等サポート事業は、児童養護施設を退所後大学等に進学するなど、働きながら自立援助ホームでの自立生活を始める児童と青少年に対する支援を行なっています。
その他、児童福祉関係の研修・研究等への協力事業、出版・監修事業等々の公益事業を時宜に応じて行っております。
末尾になりましたが、1月1日に発生した能登半島地震により被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。協会としましても被災された方々に出来るだけの支援をして参る所存でおります。子どもの生命の保全と健康維持のために、コロナウイルスで得た知見を活かし感染症に対する緊張感も持続させながら、日本中どこにいても‟事件は起こる事故には遭う”という心構えで、日夜すべての子どもの幸せのために邁進されている方々をしっかりと支援できますよう、私ども協会も一層研鑽を積んで参ります。
鈴木一光